早春の2月下旬に日本茜の種を圃場に直播きをして、最初に発芽したのが3月20日。
それから順調に成長し続けています。
しかし、ここに写っている日本茜の株は、試験用に植えたもののため、可哀想ですが成長途中で全て掘り上げる予定です。
日本茜の種は自然環境の中では一斉に発芽しません。
最初の発芽から約2カ月半経過した今でも発芽が続いています。
発芽が揃わないのはまだしも、個々の種の発芽の時期が何カ月もずれるということが、日本茜の特徴のひとつです。
そして、発芽率も決して良いとは言えません。
絶滅しないために発芽のコントロールをしているように思えてしまいます。
生き残るため、このような戦略を日本茜はとっているのでしょうか。
戦略は戦略として夢のあるものとして置いておき、発芽しない原因を考えてみます。
発芽には、基本の3要素が必要です。
「水」と「空気(酸素)」と「発芽に適した温度」。
すでに発芽しているので、この3要素については問題ありません。
次に種を蒔く深さ。
植物には発芽するときに光のエネルギーを必要とするものと、逆に光があると発芽しないものがあります。
光を必要とするものが、好光性種子(こうこうせいしゅし)。
好光性種子の場合、種を浅めに埋める、もしくは土の表面に置きます。
光が必要でないものが、嫌光性種子(けんこうせいしゅし)。
嫌光性種子は種を深めに埋め、日光があたらない暗い状態にします。
しかし、これも関係ありません。
以前に比較実験をしており、種の埋める深さを変えて検証ましたが、発芽率の違いは見られませんでした。
次に硬実種子の問題。
硬実種子とは、種の外皮が硬いために水分を吸収しにくく、発芽のスイッチが入りにくいもので、アサガオやインゲンの種がこれにあたります。
硬実種子の場合、種の一部をカッターなどで傷をつけ、水につけてから蒔くと発芽しやすくなります。
しかし、これも関係ありません。
日本茜の種に傷をつけても、発芽率に変化はありませんでした。
…となると、現代の解明されている化学において原因が絞られてきます。
植物ホルモンでアブシシン酸といものがあります。
このアブシシン酸は、成長や種子の休眠をコントロールする役割があります。
もうひとつ、植物ホルモンでジベレリンというものがあります。
このジベレリンには、発芽を誘導し促進させる役割があります。
アブシシン酸がジベレリンより量が多ければ、発芽を抑制し休眠に誘導させるが、逆にジベレリンの方が量が多ければ、発芽に向かうということです。
どうやら、それぞれのホルモン量の比率が、発芽に影響している可能性が高いようです。
しかし、それが答えだとしても更なる疑問が湧いてきます。
なぜ、個体ごとにホルモン量の比率を変えているのだろうか。
ここまで来ると、答えは神のみぞ知るですね。
いずれにせよ、「日本茜の種の発芽は気まぐれ」ということは間違いないでしょう。